年が明けたけど。 仮タイトル『ロスタイムはあと何分・一』
午後五時を回り宵の口となると、街は人で溢れた。暮れと共に寒さも一段と厳しさを増していくようであったが、それにも関わらず人々が煌々としたイルミネーションに包まれる外へ集まってくる様は、蛍光灯に群がる羽虫のようにも見える。同じように街路を歩く葉留佳はしかしてそんな思考を浮かべると、おもむろに呟いた。 「クリスマスとか滅べばいい」 キリスト教徒の耳にでも入ればとんでもないことになるであろう問題発言だったが、幸か不幸か呪詛の如きその言葉は周囲のカップルの笑顔と喧騒に紛れていく。ですよねどうせ独り身の僻みですからと心の中で思いつつ、葉留佳は小さくため息を吐いた。今日は十二月二十四日。問答無用のクリスマス・イヴ。社会人一年目の三枝葉留佳は、ぼっちだった。 入社したばかりの春先は、それはもう夢と希望に溢れていた。きっと会社の先輩に飲みに連れられていいお店を教えてもらったり合コンをしてお持ち帰りしたりされたりして女子力を高め、そうこうしている内にベンチャー企業の社長辺りに出くわして一目惚れされた後にスピード結婚なんかしちゃって玉の輿の末にセレブ街道を驀進するに違いないと、葉留佳は綿密なまでの将来ビジョンを描いていた。仕事はそれなりに頑張ればいいと思っていた。 気づけば師走であった。仕事には幾らか慣れた。出会いもあった。男も紹介されたような気もしなくもない。しかしながら、現在葉留佳はぼっちであった。 ――なぁんでこうなったのかなぁ。 あてもなく外に出てきたものの、余計に惨めな気持ちに晒されただけだったこともあり、葉留佳は少しばかり真剣に原因を考え始めた。それなりに楽しい一年だったと思う。同期の中には何人か気心知れた仲になった者もいるし、現在の職場も不満はないわけではないが、人間関係はうまくやっているはず。同年代の男性とも知り合う機会はあったし、携帯電話にはそういった人間の電話番号とメールアドレスが登録されている。連絡を取り合ったのは最初だけでその後音沙汰ないものばかりだったが、何がしかの出会いがあったことは間違いなかった。 「マジで何故だ。何か見落としている……?」 立ち止まり、葉留佳は暫し考え込んだ。目の前を楽しげな高校生カップルが通り過ぎていく。女子高生は手にプレゼントらしき袋を持っている。相手の男が贈ったものだろう。 「でさー、ヒロシが全然相手つかまらないっつーんで、今日は一人家にいるんだって」 「マジ? 超寂しくない?」 「今日になって慌てたって、もう皆予定いれてるっての。マジウケるわ」 未成年らしい甲高い笑い声を上げ、カップルは去っていく。葉留佳は考えるのをやめた。携帯でメール作成画面を開き、そこに「今の高校生カップル玉突き事故で死ね」と百回打ち込んだ。カップルが徒歩だったのに気づいたのは打ち終えてからだった。自分が死にたくなった。 ならい風が吹き付け、身を切るような寒さが葉留佳を襲う。身体的にも精神的にも何だかいっぱいいっぱいになってきた。ええいままよ、と携帯を開き、電話をかける。ダメもとでかけた相手は、高校からの大親友。姉にかけるのは少し気が咎めた。 「もしもし」 出た。クリスマスだけに出てくれないんじゃないかと思っていただけに、それだけでちょっぴり嬉しくなった。 「やっほー、理樹。今ヒマ?」 「クリスマスイヴで暇なヤツとかいるの?」 「なにお前喧嘩売ってんの? 私に対する挑戦? ここで大泣きしたっていいんだよ? いやむしろ私にはその権利あるよ、うん」 「なに一人テンパってんのさ……で、何の用?」 電話口の理樹は些か不機嫌だった。もしかしたら予定があったのにも関わらず、時間を割いてくれているのかもしれない。そう思うと、葉留佳は急に申し訳ない気持ちになった。 「いや、うん。あのさ……今ヒマ?」 「何? 葉留佳もしかして誰も捕まらないの? イヴに一人寂しく夜過ごしちゃうの? 『クリスマスで騒ぐとかアホらし』とか自己弁護しながらヤケ酒しちゃうの?」 「いいから今から時間作れるか教えろよチビ!」 「チビじゃないし。どっちかっていうとお前じゃん、ぼっち」 「ぐぎぎ」 ――こいつ喧嘩売ってんじゃねーの! 申し訳ない気持ちが五秒で吹っ飛び、今からこいつの家に強襲してやろうかと攻撃的思考に塗り替えられようとした時、わざとしらしい大きなため息と共に、予想外の返答が返ってきた。 「いいよ」 「……へ?」 「いいよ。今どこにいるの?」 「え、あ、駅前のマックの近くだけど」 「何だ、近場か。十五分で行く、待ってて」 「あ、はい」 通話の切れた携帯の画面をじっと見つめる。何だこの展開。自分からかけたクセに、葉留佳は驚いていた。そしてすぐに理樹が間もなく来ることを思い出して、慌ててマックのトイレに駆け込んだ。何だか恥ずかしくて、少し緊張していた。
***
「やぁ」 短めの挨拶をしてやってきた理樹は、やっぱり不機嫌だった。普段愛想の良い理樹がここまで無愛想になるのも珍しい。様子を窺うように、葉留佳は声をかけた。 「ひ、久しぶり。元気だった?」 「まぁぼちぼちね。そっちは?」 「うーん、こっちもまぁまぁかな。それなりに楽しくやってるよ」 「にも関わらずイヴに男どころか女友達すらひっかからずに僕を呼び出しますか」 どんだけ友達少ないねん、とでも言いたげな表情を浮かべつつ、理樹は歩き出す。そんな態度に若干いらっときた葉留佳だが、突然理樹が移動し出したので、慌ててついていく。 「どこ行くの?」 「僕んち。ちょっと忘れ物したから取りに戻る」 「えー、めんどくさい。じゃぁ理樹だけ行けばいいじゃん」 「行くとこないならとりあえず僕んちで考えればいいじゃん? それとも何か候補でもあるの?」 「いや、特にないけど」 「じゃぁ決定。はい歩く」 確かに言う通りだと思い、理樹と並ぶ。また少し人が増えた感じのある街並みは喧しい程に賑わっている。もう少しすれば店に入るなりして幾らか静まるのだろうが、今はそういった人々が移動している時間帯らしかった。 ――今なら恋人同士にでも見えるかな。 先ほどまでの独りだった自分を棚に上げそんなことを考えていた葉留佳は、ふと気になっていたことを思い出し、口を開いた。 「ねー」 「ん?」 「何で理樹は時間あるの? 誰かと一緒だったんじゃないの?」 「……」 「理樹?」 「そこを聞くんじゃないよおばか」 「誰が馬鹿だよ。だって気になるじゃん。私のこと散々けなしといて自分だって同じじゃんか。なに、もしかして理樹もぼっちだった? あはっ、マジ? イヴに独り身の男とか超寂しくない? ウケるんですけど! チョーウケるんですけど!」 指を差して大笑いしていると、理樹の右手がぶれた。
***
「なにもぶつことないじゃん。女に対して暴力とか最低じゃない?」 「うっさいハゲ」 「ハゲてないわハゲ!」 「僕もまだそんな年じゃないし」 じゃれあっているうちに、繁華街を過ぎ、住宅街へと入っていた。葉留佳の家とはちょうど反対方面に理樹の家はあった。 「うわー、この辺来るの春先以来だなぁ。夜になると全然感じ違うね」 「そらそうよ」 「っていうか街灯少なくない?」 「あー、それはあるかも。けっこう前から言われてるみたいだけど、中々増設されないみたいだね」 「なんか暗くて怖いなぁ。女の人とかどうしてるんだろ」 「んー、意外に普通に歩いてるよ。まぁ怖いには違いないだろうけど」 「そうだよねー。変質者の良い的だよ、こんな通り。私なんかすぐ襲われちゃいそう!」 「……」 「何か言えや!」 「着いたよ」 思いっきり無視しやがる理樹に噛み付こうとしたが、言葉通り、理樹のマンションに着いた。エントランスでオートロックを外し、エレベーターに乗って三階へ。その突き当たりが理樹の部屋である。 部屋の前に来たところで、葉留佳は妙なことに気づいた。小窓から部屋の灯りが漏れている。 「ねぇ、何で電気点きっぱなの?」 「ん? 人がいるから」 「え、なに、女? いや、確かに私から誘ったけどちょっと理樹の女と一緒にイヴ過ごすとかさすがに申し訳ないんだけど……っていうかお前もほいほい私連れてくるんじゃないよバカ!」 「なにまた一人で盛り上がってるんだよ……」 喚く葉留佳をよそに、理樹は鍵を開け、ドアを開けた。 「遅いわよ、葉留佳。私が来なさいと言ったら三秒以内が原則よ。今後注意しなさい」 その先には、傍若無人な女王と化した姉がいた。
多分続かない
ちなみにこの文章を書き始めたのは去年の九月十二日らしい(データ上はそうなっている)。 きっと、クリスマスまでに完成させようとしたんだろうね……。 それが年明けて一ヶ月経ってるのに三分の一も進んでないなんてどうかしてるぜ! 見事にスカスカな文である。もっと肉付けしたいがそれをやり始めると多分また一年過ぎるのでまず上げる。 上げたところで誰も見てないがな! 知らんがな、ふはは!
何はともあれ政宗面白い。 めご可愛いよめご。 しかし台のスペックが著しく運ゲーなので浮き沈みが激しい。 番長2? 北斗? 知らんがな、ふはは!
RewriteFD? エロゲ? 知らんがな、ふはは! ランスクエストはいつかやろうと思ってる。あんま評判よくないっぽいけど。 何だかもう普通のノベルゲームは出来ない気がする。
まぁここもそのうち消え去るような気もしなくもないけど、何か滾る様な材料があったら復活するでしょう。
あとついでに、今まで書き散らしたものをまとめておきます。
靴飛ばし(沙耶) ふわふわ(恭介、小毬) 蒟蒻畑(男&葉留佳) 石川五右衛門十八歳(男共) 知らない女(恭介、葉留佳) 飛んでいったのは誰か(クド) 年越しと柿ピー(理樹、唯湖) 脈・一(CLANNAD、朋也、春原)
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