雨上がりの朝というものは清々しい気持ちになれる。 僅かに水分を含んだ空気が澄んでいるようで心地良く、見渡す空には昨日の雨雲の姿はない。 渡り廊下に吹きぬける風に髪を押さえると、ぱたぱたと走ってきた後輩が私の横に並んだ。 「おはようございます、佐々美様っ!」 「ええ。おはようですわ」 「私、日直があるのでこれで失礼しますっ!」 「そう、頑張りなさい」 はいっ!と威勢の良い声を残して後輩は教室へ走り去っていった。 彼女は女子ソフト部の後輩の中でも元気なのだが、もう少し落ち着きが欲しいと思う。 「おはよう、笹瀬川さん」 「ええ、おはようで――」 突然の挨拶にも動じず、反射的に挨拶を返そうと微笑んだ。 しかし彼女の姿を見た途端、私は言葉を失ってしまった。 渡り廊下に差し込んだ朝日を浴びて美しく輝く長髪―― 優しい風に流れるジャスミンのような香り―― 何より同性をも虜にしてしまいそうな眩しくて明るい笑顔―― その笑顔を見た瞬間、不意にお節介だが優しい彼の微笑が重なった。
――――寸分違わず。
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