真夏は何処でも暑いけれど、人が多い教室の中は格別だった。 教室の暑さに耐えられなくなった私は気が付けば屋上に逃げ込んでいた。 やってきたのはいいけれど、夏場特有の熱気からは逃げられない。 結局真夏の太陽には敵わず、いつもの場所で寝転んだ。 日陰のコンクリートがひんやりしていて気持ち良い。 暑さの所為で今は持ってきたお菓子を食べる気分にもなれない。 暑い。 ふとアイスキャンディーが食べたくなってきた。 アイスキャンディー。 冷たくて甘いアイスキャンディー。 「何してるの、小毬さん?」 頭上に聞こえた声に顔を上げた。 屋上で大の字に寝転ぶ私の顔を不思議そうに覗き込む男の子。 「あ、理樹君」
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真夏は何処でも暑いけれど、人が多い教室の中は格別だった。 僕は教室から逃げるように、来ヶ谷さんから貰ったアイスキャンディーを手に屋上に訪れた。 屋上を軽く見渡すと、日陰で倒れている小毬さんの姿を見つけた。 教室に居ないと思ったら案の定、屋上にいた。 僕は小毬さんに近付いて声を掛けた。 「何してるの、小毬さん?」 屋上に寝転んでいた小毬さんは、僕の声に慌てて頭を上げた。 「ご、ご主人様っ!?」
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「ダメじゃないか小毬さん。こんな所で寝てちゃ」 「ご、ごめんなさい…」 確かに屋上で寝ちゃうのはダメだったかも。 制服とか汚れたり皺になっちゃうかもしれないし。 ふと理樹君の手にあるモノに気が付いた。 アイスキャンディーだ。 熱気で溶け始めているのか包装には幾つもの水滴が光っていた。 食べたい。 視線を外そうとしても、すぐにアイスキャンディーに目が行ってしまう。 それに気付いた理樹君がアイスキャンディーを私の目の前で軽く振った。 考えるよりも早く頷いていた。 恥ずかしいと思いながらもアイスキャンディーに胸が膨らむ。 「しょうがないな、小毬さんは」 口では呆れつつも笑顔の理樹君は私にアイスキャンディーをくれた。 「あ、ありがと〜!」 私はお礼を言うと、素早く包装を開けてそれを口に含んだ。 口いっぱいにひんやりとした感触と爽やかなオレンジ味が広がる。 「美味しい、小毬さん?」 「うん、冷たくておいしいよ〜」 そんな私を理樹君は笑顔で見つめていた。
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「ダメじゃないか小毬さん。こんな所で寝てちゃ」 「も、申し訳ございません…」 僕が叱ると、しゅんと縮こまってしまった。 可哀想にも思えたけど勝手に居なくなってしまっては僕も困る。 ちらちらと上目遣いで僕を見上げる小毬さん。 どうやら僕に許しを乞いているようだ。 だが、簡単に許しては意味がない。 僕は少し考えてから、彼女にいつもの罰を与えることにした。 僕が目で訴えると彼女は迷わず頷いて返した。 「しょうがないな、小毬さんは」 僕の言葉に目を輝かせる小毬さん。 「あ、ありがとうございますっ!」 僕へお礼を言うと、彼女は僕の目の前に跪き慣れた手つきでソレを取り出した。 いつも焦らしている所為か、彼女はすぐさまソレを咥え込んだ。 ソレの味を楽しむかのように彼女は軽く吸い込んだ。 「美味しい、小毬さん?」 「はい、とても美味しいです…」 うっとりとした彼女の表情に応えるように、僕も笑顔を返した。
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