「ヤッホー!理樹くん今日も元気かーい!」 「葉留佳さんはいつも元気だね」 「モチロンサー!私から元気を取ったらハンバーガー以外の何が残るってんだー!」 「うん、ハンバーガーすら残らないね」 どうしてハンバーガーなのかというツッコミはしない。 下手に刺激しても暴走するだけだろうし、ここは華麗なスルーを魅せた。 「ところでさー理樹くん!コレコレ、コレ見て下さいヨ」 じゃーん!と葉留佳さんが手に持っていた少し大きめのビニール袋を掲げた。 何だろう、新手のコレコレ詐欺だろうか? 葉留佳さんは僕に見せ付けるようにしてビニール袋の口を広げた。 中にはタマゴサンドやらクリームパンやらタマゴサンドやらコロッケパンなど沢山のパンが入っていた。 何故かやたらとタマゴサンドが目立つ。 「どうしたの、こんなに沢山」 「あのね、購買のおばちゃんにパンの食券を沢山貰ったの」 「うん」 「それではるちん、折角だしぱーっと使ってみようと思ったんですヨ」 なんとなくその様子が思い浮かぶ。 「それで?」 「そしたら珍しく購買が空いていたのでこれは行くしかねー!てなってデスネ」 「それで、買いすぎちゃったと…」 「ソーグッド!」 やたらとテンションの高い葉留佳さんに呆れたような表情を向ける。 次第にテンションは尻すぼみとなり、やはは…と困ったように頭を掻いていた。 「それでですね理樹くん!パンはパンでも好きなパンは何デスカ!?」
「パイパン」
「――へ?」 葉留佳さんの目が点になった。 よく分かってない様子なのでもう一度言ってあげよう。そうしよう。 「パイパン」 葉留佳さんの口から、えぇと…と困った声が漏れる。 「そこはこう、フライパン!とかジャペァーン!とか――」 「パ、イ、パ、ン」 「…………」 「…………」 なんだこれ。超楽しい。いや、超キモチィー。 戸惑いを隠せない表情に何故か嗜虐心がくすぐられる。 「ああ、そうそう!あのね、アップルパイもありますヨ!理樹くんはどんなパ――」
「オッパイ」
「…………」 「…………」 再び絶句する葉留佳さん。 それを真剣に見つめる僕。 端から見たらどう思われるのだろう。ただのセクハラに見えるようなら、それは間違いだ。 この楽しさを素人からでは共感を得られないだろう。 「ちょっと待っててね理樹くん」 「うん」
2分後――
「こまりんマックスギャラクシカボンバヘッ!」 ずどががーーんっ!! 「うわっ!?」「ひゃーっ!?」 何故か連れて来られた小毬さんをぶつけられた。 手足がもつれ込んでお互い廊下に倒れてしまう。 「理樹くんなんか嫌いだぁーっ!うわぁーんっ!」 しかも当の葉留佳さんは捨て台詞を吐いて走り去ってしまった。 「ふえぇー、いたいー」 とにかく起き上がろうと足を動かした。モゾモゾ。 「ひゃうっ!?」 ん?これは…?モゾモゾ。 「ひゃふぅんっ!?」 ……。 「小毬さん」 「ふえ?ななな何ですか理樹君!」 「結婚しよう」
…………。 「ふええぇええぇぇぇっ!!?」
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