お題:たびーさんより「モテる真人」

 

「なあ、理樹」
 課題として出された問題集を解いている時に、指一本で腕立て伏せをしながら真人が訊いてきた。
「下駄箱に手紙が入ってたんだけどよ、どうすればいいんだ?」
「手紙?」
「ああ」と返事をしながら顎でベッドの上を指す。そこには確かに、三つの手紙が無造作に置かれていた。
 僕はそれを手に取った。ふたつは白い封筒で、残りは薄い青色だ。
「見ていいの?」
「いいぜ」
 僕はその中からひとつ取りあえげて開ける。そこに現れたものは――
「……ラブレター、だよね?」
 書き手の恋々とした気持ちが伝わってくる、紛う方なきラブレターだった。

 

「で、どうするの?」
「どうするって、なにがだ?」
 はぁ、と息を吐く。真人はこれから三人の女子からの告白に断りを入れなくてはいけない。
 手紙には「明日の放課後に○組の教室で待っています」といった内容が書かれていた。不幸中の幸いなのが、そこに書かれていた教室が被っていなかったことだろう。もし被って鉢合わせなんて状況になったら、修羅場は確実だ。
「どんな断り方をするかとか決めてきてあるの?」
「そんなもん、行き当たりばったりでなんとかならねえか?」
「それじゃあ相手を傷つけちゃうでしょ。当たり障りのないように、でもしっかりと後腐れのないような断り方をしなくちゃ」
「めんどくさいのな」
「放課後までに考えておいた方がいいよ。まさか僕が付き添うなんてできないんだし」
 そうやって昼休み終了のチャイムが鳴るまで話していた。

 

 

「井ノ原さん! 私、いつからか直枝さんと遊んでいるあなたに眼が行くようになっていて、気付いたらいつもあなたのことを考えてました……
 好きです。付き合ってください!」
「ありがとよ。でも付き合うことはできねえ」
「……そうですか、なんとなくそんな気はしてました。井ノ原さんって、あんまり恋愛とかに興味なさそうですしね……。
 はぁ、なんだかすっきりしました。ありがとうございます」
「あ? おう、いいってことよ」
「ふふっ」

 

「井ノ原君、キミの筋肉は素晴らしいね」
「おうっ、ありがとよ」
「その筋肉について非常に興味があるのだが、キミの上腕筋を少し触らせてくれないか?」
「いいぜ、ほらよ」
「うん、非常にいい付き方をしているし、骨とのバランスもいい。加えて柔軟性もある……普段はどんなトレーニングをしているのか見てみたいな」
「朝に腕立て五十回だろ、腹筋五十回だろ、スクワット百五十回だろ――」
「よし、普段のキミの生活を知るために、いっそ付き合おうじゃないか」
「え……わるいけどよ、それはできない相談だぜ」
「そ、そうか……分かった。邪魔したな」
「もう筋肉はいいのか?」
「嗚呼、もう充分、分かったさ」

 

「真人!」
「あ、どうしたんだ謙吾こんなところで」
「好きだあぁぁ〜!」
「気持ち悪いこといってんじゃねー! 来るなー!」
ドドドドドドド

 


「どう、ちゃんと上手に断れたの?」
「ハァ、ハァ、多分な」
「珍しいね、真人が息切れしてるなんて」
「ふ、それほどでもないさ」
「いや、ほめてないからね?」
「それはそうと理――」
「井ノ原さーん!」
「うおっ!?」
「あ、クド。おはよう」
「ぐっどもーにんぐです、リキ」
「今日はどうしたの?」
「はいっ、井ノ原さんを家庭科部室に呼びにきました」
「そろそろ付き合い始めて一ヶ月だったっけ?」
「ああ」
「井ノ原さん、行きますよ」
「おう!」

 

(無理だorz)




    
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