その気持ちを抱いたのは、いつからだったか、そんなことは明確には覚えていない。
だがしかし、確実に私の中にそれは根付いている。
それは、私がコドモではなくなったということなのか。
いつまでも、仲良しこよしではいられなくなったということなのか。
だとするのなら、何と残酷なことだろうか。
私は、そんな事望んではいなかったのに。
いつまでも、皆と笑い合っていたかったのに。
私は、どうしようもない程に、彼を独り占めしたくなっていたのだ。

「あっ、理――」
「やっほー理樹くん、ちょっといい?」
「はいはい葉留佳さん、どうしたの?」
「……」

伸ばした手が行き場所を失い、無惨に下ろされる。
私ではない誰かに優しく微笑む彼が、妬ましい。
そして、そんな彼に太陽の様な笑顔を見せる彼女も、憎憎しい。
あぁ、違う、そんなことはない……。
そんなことは、思っちゃいけないんだ。
皆友達、私の大好きな人達。
目を伏せ、どろどろと蠢く気持ちを、ぐっと握りこぶしを作って押さえ込む。
彼に届かなかった手を、強く握り締めて。

「……いいのか、こまりちゃん」
「えっ、何が?」
「理樹に、何か用事があったんじゃないのか?」
「う、うん……でも、大したことじゃないから」

あぁ、今私は、きちんと笑えているのだろうか。
鈴ちゃんを安心させるくらいの顔を、作れているのだろうか。
力を込めすぎて血の巡りが悪くなった白い手に、鈴ちゃんは気づいてしまっただろうか。
徐々に、崩れていく。
私の我侭な気持ちのせいで、皆の輪が、少しづつ壊れていく。
ダメ……そんなことは、絶対にしてはいけない。
そう、思ってるのに……。

「でねっ、でねっ」
「ちゃんと聞いてるから葉留佳さん、落ち着いてよ」
「だってー」

その笑顔を、私に向けて欲しいのです。
私だけに、私のためだけに、私の前だけで笑って欲しいのです。
そんなことを思ってしまう私は、いけない子です。
誰も、幸せにはなれません。
でも、もう無理なんです。
私はもう、あなたが欲しくてたまらないのです。
皆が好きでも、一緒にいたくても、あなたの存在がなければ何の価値も見出せないのです。
だから。

「今度、私の家に来てよ。お姉ちゃんもいるから」
「あ、佳奈多さんも一緒に住み始めたんだね」

はるちゃん、私に、彼を譲ってください……。


大好きなカレの隣には
今日もまた笑ってるあの娘がいるのかな?
お願いよ 明日はあたしにも
少しだけカレの隣 いさせてよ
ねぇ 神様







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