「普段堅物な佳奈多君が、可愛いらしい小物を身に着けているというギャップか……しかし、それはややありきたりすぎないか?」
「いえっ、ベタだからこそ許される部分というのもあると思いますっ」
「クドの言う通りさ、来ヶ谷さん。そのベタが生まれるまでに、どれだけのジャンル、属性が採用される事なく淘汰されていったのか……それを考えれば、僕らのチョイスも納得できると思うけど?」
「ふむ……リスクより、安全牌か。だがお前らは別に利益を求めてやってるわけじゃないんだから、リスクなんて大した事ないだろ?」
「わふー、確かに恭介さんの言う通りかもしれません……」

クドが指摘を受け、うむむと唸る。
今まで何度か挑戦してみたものの、全て失敗に終わってしまった、佳奈多さんを可愛くしちゃおう作戦。
クドと争い、協力し……ときたものの、成果はあまり得られなかった。
現段階で成功率が最も高いのは、クドのおねだりなのだが、それでは僕が面白くない。
もちろん、『しょうがないわね……』と言いながら恥ずかしそうにそれを身に着ける佳奈多さんも良いのだが、できればもっとバリエーションが欲しい。
というわけで、今回新メンバーということで、来ヶ谷さんと恭介に相談を依頼したのだ。
リトルバスターズの中でも切れ者の2人なら、何か良い案を出してくれるに違いない。

「確かに……今考えればリスクなんてないようなものだね」
「まぁ周りの目、委員長の許容範囲とかを考えれば妥当な策だったけどな。でも、もうちょっと大胆に攻めてみるのもありじゃないか?」
「うむ、お姉さんももう少し刺激がある方が、作戦を練るのに気合いが入るな」

2人の助言を受け、方向性が定まってくる。
新ジャンルの開拓、か……。
いや、別に新ジャンルでなくてもいい、何かこう、新鮮味、驚き……そういうものがあればいいわけだ。

「犬耳を付けるなんてどうですかっ」
「動物系か?それもけっこうありきたりだろ?」
「そうですね……で、でもっ、学校で犬耳は中々に新鮮――」
「それを佳奈多君が了承してくれればいいがな」
「わふー……確かに無理そうです」

クドが残念そうに頭を垂れる。
確かに学校で犬耳を付けた佳奈多さん……大いにアリだが、その難度は今までとは比べ様もないくらいに高い。
実現は、不可能に近いだろう。

「……こんなのは、どうだろうか?」

そこで、恭介が口を開くと同時に、何か白い帯状の物を取り出す。

「何それ?」
「晒だ、これを委員長に巻かせる」
「まぁ晒だからな……で、それをするとどこに萌えポイントが?」
「これを胸に巻けば、きっと制服の上から見れば貧乳に……って、はっ!?」
『うわー……』

全員が恭介の周りから一歩引く。
晒を手に、むふふと含み笑いをする恭介は、この上なく気持ち悪かった。

「……あっ、クド、僕ら課題やらないと!」
「そ、そうですねっ!時間がありません、早速行きましょうっ」
「き、君らだけでは心細いだろう?お姉さんが教えてあげよう」
『わーい、百人力だーっ!』
「待ってくれぇぇぇぇぇっっ!!!別にそういうつもりじゃなかったんだああああ!!!!」

すたこらと逃げ出す僕らの背後で、恭介が泣き叫ぶ声が木霊するのであった。



「クドリャフカ君……気をつけた方がいいぞ」
「はい……貞操帯、買った方がいいでしょうか?」
「やりすぎやりすぎ」









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