「理樹、一緒に行こう」
「うん、いいよ」

放課後、鈴と一緒に部室へと向かう。
真人達は先に行ってしまったらしい、大方我慢しきれずに走っていったのだろう。
僕らは急ぐ事もせず、のんびりと道のりを歩く。

「そういえば鈴」
「ん?何だ?」

その道中、いつだったかの恭介の問題発言を思い出す。
兄がそんな事実を知っているのは如何なものかと思うが……知ってしまった以上、僕も何らかの形でサポートするべきなのだろうか。
とはいえ、僕だって女性の、その……そういった知識に明るいわけではない。
ましてや僕が手取り足取り教えるわけにいかないのは当然であり、ここは何とか鈴に自らそういった事を気にかける様に差し向けるべきだろう。
なので、僕は遠まわしに色々突いてみる事にした。

「その……遅くても、気にする事ないよ」
「……何がだ?」
「大丈夫、きっといつか来るからさ!まぁ、何がかは言わないけど」
「だからお前は何を言っているんだ?」
「あと、もう少し気を遣った方がいいよ、もう鈴も高校生だし……小毬さんとかに相談したりしてさっ」
「すまん理樹……何の話か全くわからん」

鈴が困った様に眉根を寄せる。
大丈夫、鈴……僕も、自分で何言ってるかよくわかんないから。
でもごめんね、何の話かは言えないんだ。
それがバレちゃったら僕も色々とまずいからね、うん。

「まぁ悩みはあるかもしれないけどさ……そういうのって、大きさじゃないと思うし」
「……大きさ?」
「鈴は可愛いから、心配する必要ないよ」
「……あ、あたし可愛いか?」
「うんうん可愛い可愛い、それに、きっと祈ってればそのうち大きくなるから……こう、バイーンってね!」
「そ、そうかっ……何だかわからんが、ありがとう、理樹」
「よーしっ、それじゃ野球しに行こっか!」
「うんっ」

爽やかに笑顔を交し合い、僕らは校舎を出た。
よくわからなかったが、僕も鈴も、とても晴れ晴れとした気分になったのだった。


あれ、僕何言おうと思ってたんだっけ……?




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