最近気になる事がある。
……葉留佳さんと佳奈多さんのおっぱいって、同じサイズなんだろうか?
いやっ!
彼女らは双子ではあるけれども違う人なわけだから、同じ事もあるだろうし違う事だってあるのはもちろんわかってはいるんだ!
でも……気になって、仕方がないんだ。
別に僕がおっぱいばかり気にしているわけじゃない!
ただ、比較する対象に、何となく『おっぱい』を選んだだけに過ぎないんだ。
だから身長でも体重でも、ウエストでもヒップでも何でも構わないわけなのだが……。
いや、ごめん、自分にウソをついていた。
やっぱり僕は、『おっぱい』の大きさを知りたいんだ……。
彼女らのバストがどれだけあって、2人とも同じサイズなのか気になっているんだ。
それは失礼に値する事だと重々承知してはいる。
だが、一度気になってしまった事柄を頭から切り離すのは相当難儀な事で、忘れよう、忘れようと思うと逆にこいつらはどんどん頭の中を侵食していく。
正しく、本能というやつさ。
とはいえ、これを問いただすには、かなりのテクニックを要する。
女性にとっては大変恥ずかしい部位に関する質問だ、いかに自然に、そして紳士にこれを聞けるかが重要なポイントとなろう。
そして、どちらから聞くのかも大切だ。
セオリーなら、恋人である葉留佳さんに聞くのだが……。
い、いかんっ。
ついつい『佳奈多さんから先に聞いてみようか…』なんていう冒険心が宿りそうになった。
そんな事したら、佳奈多さんにボコボコにされてしまうのは想像に容易い。
そして、それを葉留佳さんに知らされたら、彼女にも折檻されてしまう。
……やはり、葉留佳さんからの方が無難か。
ようやく指針を固めた所で――

「何難しい顔してるのよ、直枝理樹」
「あ、佳奈多さん」

偶然にも佳奈多さんが通りかかる。
……これは、神が『佳奈多さんから先に行け』と言っているのだろうか。
あまりにもタイミングが良い……いや、悪すぎる。
葉留佳さんにしようと思った所で、姉の登場……これは、何か運命的なものを感じずにはいられない。

「…さっきからどうしたのよ?」

むっつりと黙りこくる僕に、佳奈多さんが訝しげな目を向ける。
……よしっ、聞こう!

「佳奈多さん」
「ん?」
「おっぱいの大きさ、教えて?」

バキィッ!

顔面に正拳突きを食らいました。
ストレート過ぎたらしい。

「……あなたはやっぱり最低ね。妹の彼氏として不安だから、再教育してあげるわ」

僕の一言が彼女の堪忍袋の尾を盛大にぶっちぎったらしく、額の青筋をぴくぴくと動かしながら、僕の襟首をむんずと掴み上げた。

「あ、あの…佳奈多さんっ」
「話は後で聞いてあげるから……あなたにはもう少し常識というものを教えてあげるわ」

ずるずると僕を引きずり、ふふふと陰鬱な笑いを浮かべながら何処かへと向かう佳奈多さん。

……ぼ、僕のバカヤローーーーっっっ!!!
絞まる首に苦しみながら、2分くらい前の自分を、盛大に罵倒する僕なのであった。




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