「理樹、最近調子はどうだ?」
「いや、いつも会ってるじゃない…」

いつもの様に休み時間に自販機へ向かおうとしたが、そこで鈴が話しかけてきた。
腕を組んで、少し偉そうだ。
まぁそれが鈴っぽいといえばそうなのだが。

「そうじゃない。はるかとはどうなんだ?」
「ん?葉留佳さんと?……うん、まぁ特に問題はないよ」
「そ、そうか…」

眉をぴくりと動かした。
笑うでもなく、怒るでもなく…ただ、それだけ。
けれども、鈴はわかりやすい。
その些細な仕草だけで、彼女の動揺がよくわかった。

「はるかは可愛いか?」
「え?ま、まぁね」
「2人でいて、楽しいか?」
「うん、そりゃもちろん」
「そ、そうか……お前らは、良いカップルだな」
「ありがとう…」

言葉だけ聞いていればとても微笑ましいものなのだが。
鈴の表情は、著しく厳しい。
眉間に皺が寄り。
目は、彼女の吊り目がより鋭くなっている。
やっぱり鈴でも人の惚気は聞きたくないのかなぁ。
振ってきたのは鈴だけども、この話題はよそうか…と思ったが。

「ここで1つ理樹に提案なんだが」
「何?」
「私なんか、どうだろうか?」
「…は?」

組んでいた腕を解き、手を腰に当てて言ってくる。
が、全く要領が掴めない。
思わず間抜けな声が上がる。
すると鈴は、やっぱり自信満々な表情で口を開いた。

「私は、可愛いだろう?」
「……まぁ」
「良い女になると思わないか?」
「うーん、どうだろう?」
「きっと良いお嫁さんになるに違いない」
「……で?」

何が言いたいのか問う。
ぴんと来ない僕に苛立ったのか、眉を吊り上げた。

「いいか、理樹…」
「うん」
「今から言う質問に、正直に答えてくれ」
「わかった」

頷くと、鈴は一度深呼吸。
肺に目一杯空気を溜め込んでから。
吐き出す様に、言った。

「私とはるか、お嫁さんにするならどっちが良いんだっ!?」
「葉留佳さん」
「言ってろボケーーーっ!!!」

正直に答えたら罵倒して走り去ってしまった。
…何だったんだろう。
鈴の走っていった方向を見つめながら、僕は鈴のスカートが舞い上がらない様にと願うのだった。




鈴、女子メンバーの理樹との交際を許す(本編最後)
            ↓
理樹、色々あって葉留佳と付き合う(本編後の暇つぶしの設定)
            ↓
ここにきてようやく、鈴、理樹と他の人との『好き』の違いに気づき始める。
            ↓
今、微妙に乙女心満載。


という設定です。
なので、女子メンバーに『許す』とあの頃は言っていたし、今でもその気持ちはあるが、それでもちょっと思うところもあったり…といった感じで。
inserted by FC2 system