『今日の放課後、食堂裏のベンチのある所に来てください。
伝えたい事があります。
待ってます…』
「お、おおぉぉぉ…」
便箋が震える。
いや…違う。
手が震えているんだ。
何とも言えぬ高揚感が胸を支配する。
ハートのシールが貼られた、ピンク色の封筒。
セットだったのだろう、同じくピンクの便箋。
ラメの入ったより赤に近い色…苺色というのだろうか、そんな色合いのペンで書かれた、女の子らしい丸文字。
そしてこの文面。
これは、もしかして、ひょっとすると…?
「ら、ラブレ、ター…!?」
自分で口にして、自分で照れる。
下駄箱に入れられた手紙。
今時なんと古風な。
いや、話には聞かないけれど、今でも使われる常套手段なのだろうか?
「どうした、理樹」
「っ!?」
後ろから真人に声を掛けられ、反射的に制服のポケットに手紙を突っ込む。
やべ、くしゃくしゃになっちゃった。
「?」
「あ、うん、何でもないよ、本当だよ?」
「そうかぁ…?今何か隠さなかったか?」
訝し気な目を僕に向ける真人。
ちぃっ…変な所で勘がいいからな、真人は。
心中で舌打ちをしながら、適当に苦笑を浮かべながらごまかす。
「何も隠してないよ。携帯マナーになってるか確認しただけだから」
「………そうか。授業中になったらやべぇもんな」
僕の嘘を信用し、歯を見せながら笑った。
まぁ、所詮は真人だな…。
何とも真人に対して酷い事を思いつつ、真人の隣に並ぶ。
鈴達が10メートル程先を歩いていた。
「あいつら先に行きやがったっ。行こうぜ、理樹っ」
「うん」
廊下内の生ぬるい空気を切る様に走る。
それにしても…。
えへ…困ったなぁ、告白とかだったらどうしよう。
僕には葉留佳さんがいるからなぁ。
でもまぁ、彼女としては無理でも、友達として交流するくらいは…。
放課後に待っているであろう女生徒との邂逅に思いを馳せる。
自然と口元がにやける。
不誠実極まりないけど。
ちょっと、楽しみだな…。
そんな事を、思ったのだった。
下駄箱から、コバルトブルーの目が覗いていたとも知らずに…。