「クド…君とはいつか、雌雄を決さねばならないと思っていたよ」
「はい……私もです、リキ」

クドの部屋。
僕とクドは、互いを牽制しあう様に対峙している。
これは、逃れられない運命。
いつかは闘う運命だったのだ。

「リキとは、いつまでも笑い合える友達でいたかったです…」
「僕もだよ……けど」
「はい…この事に関しては、友情は関係ありませんっ。どちらが優れているか、それを決めるのみなのですっ!」

ガガーン!と後ろに雷鳴が轟きそうな勢いで、クドが吼える。
そう、友であろうと、これだけは譲れない。
今までは、こうして表立って勝負をする事はなかった。
ジャブを繰り出す様に、互いの様子を探る日々…。
しかし、それも終わった。
一度は敗北した。
しかし、僕はもう負けない!
完璧に、『彼女』の事は全て把握した!
いくらクドといえど、僕には勝てないだろう。

「ふ、ふふ…」
「やけに自信があるようですね、リキ…」
「もちろんさ…僕に負ける要素など、ないっ!」
「大した自信ですが……あいにくと、私も負ける気はありませんっ」

気迫をぶつけあう様に、言葉を交し合う。
もうそろそろ、頃合だろう。
僕は、鞄の中に手を入れる。
同じ事を思ったのだろう、同様にクドも自身の鞄の中に手を突っ込む。
…暫しの静寂。
それぞれ目を閉じ、時を待つ。
……そして!

カッ!

同時に目を開く。
高らかに、僕が宣言する!

「どちらがより可愛い物を二木さんに身につけさせられるか、勝負だあああぁぁぁーーーっ!!!」
「何くだらない事言ってるのよあんたはあぁぁぁぁーーーっ!!!」

ドゲシィッ!

「ぐはぁっ!」

宣言した直後に、後ろから激しい衝撃。
為す術もなく、前のめりに倒れる。

スチャッ。

僕を飛び越える様にして、華麗に着地する1人の女生徒。
ここは、クドと……二木さんの部屋であるから、それはつまり。
あぁ、やっぱりこのドメスティックな雰囲気は、二木さんだったんですね…。

「ったく、帰ってきたら2人して妙な雰囲気だから何事かと身構えていれば……クドリャフカも、直枝理樹の奇行に肩入れしないの」
「で、ですが佳奈多さんっ。これはお互いのプライドをかけての……」
「はいはい、わかったからほら、その何だかよくわからないストラップをしまいなさい」
「わかったと言っておきながら全くわかってないですっ。いいですか、佳奈多さんっ……」

その後、無残に倒れる僕を放置して、議論に白熱する2人なのだった。
あの、いいから介抱…。




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