今日は葉留佳さんとデート。
どこかへ行く…というわけではなく、街中をぶらぶらしようか…という事に。
ウインドウショッピングというやつである。
こうして2人で出かけるのは久しぶりだったからか、葉留佳さんは初っ端から上機嫌だった。
最近は何かと失態を犯してしまっていたので、ここで何とか挽回したい所だ。
特別なイベントは考えていなかったが、葉留佳さんは楽しげなので、この分では満足するものに出来そうだ。
そんな事を考えながら、鼻歌混じりの葉留佳さんと並んで街を練り歩く。

「こまだ」
「しおちゃん、面白いですっ」
「そのネタはもうやめなさい、汐…」

そこで、とある親子と擦れ違った。
若い夫婦だった。
子供は…女の子だろうか、背丈から考えて幼稚園児くらいか。
というか娘さん、駒田のマネしてる!?
若いながら何と有望な…。

「……」

その光景を、葉留佳さんがじっと眺めていた。
何か面白い事でもあったのだろうか…?
いや、幼稚園児くらいの子が駒田のバッタースタイルをマネしてるだけでも相当面白いが…。

「あの親子、何か凄い幸せそうだったね」
「そう?…まぁそうかもしれないけど、擦れ違ったくらいでよくわかったね」
「う〜ん、何か雰囲気というか…何となく、そう思ったの」

葉留佳さんの言葉を聞き、振り返ってもう一度あの親子を見る。
距離が開いたせいで姿が小さくなっていたが、夫婦の笑顔が見て取れた。
幸せそう…ね。
確かにそうかもしれない。
娘が駒田の物真似を自信満々に披露できる家庭なのだから、きっと円満に違いない。

「ねぇ理樹君」
「ん?」
「もし自分に子供が生まれたらさ、どんな子に育って欲しい?」
「どんな子?そうだなぁ…」

葉留佳さんの質問に、空を仰ぎ見ながら考える。
息子か、娘か。
嫁は誰なのか。
前提条件を言い出すと止まらないので、本当にぱっと思いつくものを並べていく事にする。

「元気な子がいいかな」
「やっぱり?そうだよねぇ、やっぱそうだよねぇ」
「よく喋る子とかね」
「うんうん」
「ちょっと落ち着きない方が親としては可愛げがあったりするかも」
「そうそう」

葉留佳さんが、嬉しげに頷いている。
僕の考えと同じなのだろうか?
だとしたら、少し嬉しいかもしれない。
結婚なんてまだ先の話ではあるが。
後は……あぁ、あったあった。

「…でも、しっかり者の子もいいな」
「っ!?」
「何でも自分で出来る子も、何だか親としては鼻が高いかも」
「……」
「勉強も出来たりとか」
「……へぇ」
「礼儀正しい子とかに育ってくれたら、よそに連れていっても困らないしね」
「……そう」
「…葉留佳さん?」
「…何?」
「い、いや…何でもない」

一気に不機嫌になった。
じと目でこちらを見ている。
な、何故だ…。
何が悪かったのだろう。
今並べたものは、どれも代名詞的存在だと思ったのだが…。
ダメだ、これ以上話すと危ない気がする。
こ、この話はもうよそう…。

「ま、まぁ自分に子供が出来るなんてまだ全然想像出来ないしねっ」
「…そうだね」
「そ、それじゃ行こうよ」
「…そうだね」

その後、葉留佳さんの機嫌は直らず、微妙な雰囲気のままデートは終了した。
あれ、楽しくデー…ト……。



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