「恭介……どう?」
恭介は悩んでいた。目の前にいる人物の姿を見て。
ここは、男子寮の中にある、恭介の部屋。ルームメイトは席を外しており、今はいない。それを狙ってなのか佳奈多はある格好をして恭介の部屋に入ってきた。
恭介も漫画を読んでおり、佳奈多の来訪に気づいていなかった。それが始まりと知らずに……。
「ね、恭介? どう?」
気付いた時には時すでに遅し、恭介の上に覆いかぶさるように陣取る佳奈多。いわゆるマウントポジションというやつだろう。
顔を無駄に近付けて、恭介の様子を窺う佳奈多。
「また……か。佳奈多入るときはノックしてくれって言ってるだろ?」
「やーよ。そんなことしても絶対に気づかないじゃない」
まあ、そりゃそうだと恭介は心の中で呟いた。
そもそも佳奈多はこういうことに熱心ではないはずだが? と思う恭介を尻目に佳奈多はさらに顔を近づける。
いくら彼氏彼女の関係だとしても、ムードというものが欲しい。恭介は人が思う以上にロマンチストなのだ。だからムードが大切だと思っている。
「また、来ヶ谷や、西園に何かされたのか?」
首を横に振る。ということは違うのか。
「五円玉ずっと見てって、来ヶ谷さんに言われて見てて、気づいたらこんな格好になってた」
されてんじゃねーか! 声に出そうと思うもぐっと堪える。
「そしたら、きょーすけに会いたくなって来ちゃったの」
とろんと焦点がだんだんとゆらゆら揺らいでいる佳奈多の瞳。なぜだろうか、佳奈多の口調がだんだんと幼くなているような気がする。
「ねぇ、恭介ってばぁ」
姿を見まいと漫画を読んだ振りをしていたのだが、それをどけられて佳奈多の姿を見てしまう。
「っ!」
恭介に電流が走る。
まず、最初に目に入った佳奈多。背丈は変わらない。顔も変わらない。しかし、しかし、格好がおかしかった。
なぜにナース服なのだろうか、と最初の疑問。
白い天使とはよく言ったものだとしみじみと思う。白い白衣に短めのスカート、ここからでも見える白く輝く太ももが眩しい。
「ぐはっ!」
吐血……はしないも言葉だけは大ダメージを受けたことを物語っている。それほど衝撃的な格好である。
胸元はなぜか空いているし(ぶらじゃーがちらちらと見える、色はピンク)、恭介の上にオンニャノコ座りをしているため短いスカートからもチラチラとデルタゾーンが見えてしまう。
不可抗力だとしても、見てしまう。なぜなら恭介も男の子だからだ。下着が見えているのに目を背ける男は男ではない! それほど断言出来るほど強調されている。
「ねぇ、きょーすけぇ」
艶っぽくエロめかしく見える佳奈多。
そして、話しは冒頭の悩みえと戻る。
このまま、襲うべきか、襲わぬべきか……。
恭介は悩みに悩む。